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偽装他殺

人間が壁を伝って降りてくれば、誰かの注意を惹かないはずはない。
聞き込み捜査によって、そのような事実がなかったことが、確かめられていた。
問題の時刻、笹原の部屋から、直接外部に逃げていった人物は、絶対にいないのである。
一方、ドアの外には工事人たちがいた。
そして部屋の左右は、隣室とを仕切る部厚い壁であり、むろん出入は不可能である。
「つまり、犯人は犯行後、部屋から出ていない。
そして部屋には、死体以外に人間の姿はなかった」(本文より) 芸能界と麻薬の関わり合いを描いた長篇推理サスペンス。
●大谷羊太郎(おおたに・ようたろう)1931年、東大阪市に生まれる。
慶応大学文学部国文学科中退。
大学在学中にプロミュージシャンとしてデビュー。
芸能界で過ごした後、1970年に『殺意の演奏』で第16回江戸川乱歩賞を受賞。
翌年より推理作家専業。
トリック中心の推理小説を120冊以上発表。
近年は時代小説でも多くの著書を発表している。




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