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サラン・故郷忘じたく候

まさにその時を狙いすましたように、秀吉の侵寇――忌まわしい壬辰倭乱(イムヂンウエラン)は始まったのだった。
その夜、申家の屋敷は、漢城の他のあらゆる家がそうであったように、重苦しい緊張感に包まれた。
愛蓮もその空気を共有する一人だった。
そして一夜明けると、家人たちは今更のように愛蓮が‘倭奴’であったことを思い出したのである。
(「耳塚賦」より) 日本と朝鮮半島との関わりをかつてない斬新な切り口で描いた6つの短篇を収録。
また、その6篇を著者自ら解説した「電子版あとがき」を追加収録。
●荒山徹(あらやま・とおる)1961年富山県生まれ。
上智大学卒。
新聞社、出版社勤務を経て、朝鮮半島の歴史・文化を学ぶため韓国留学。
延世大学校延世語学院韓国語学堂卒業。
1999年『高麗秘帖』で小説家デビュー。
『魔岩伝説』『十兵衛両断』『柳生薔薇剣』で三度、吉川英治文学賞新人賞候補となり、2008年『柳生大戦争』で第2回舟橋聖一文学賞を、2017年『白村江』で第6回歴史時代作家クラブ賞作品賞を受賞。
日韓交流史を主題とする時代伝奇小説を発表して注目を集めた。
他の作品に『竹島御免状』『長州シックス 夢をかなえた白熊』『シャクチ』『キャプテン・コリア』など多数。




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