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拾われ地蔵

事情を知った長屋のみんなが手分けして探してくれたが、とっぷりと日が暮れてもお美代は戻らなかった。
ひどい目に遭っているのではないか。
ひもじい思いをしているのではないか。
寒くて震えているのではないか。
悪いことばかり考えてしまう。
お袖は、何も喉を通らず、床に入る気にもなれず、お美代が拾ってきたお地蔵さまを、一晩中、胸に抱いていた。
(「第一話 拾われ地蔵」より) 助けを必要としている者に拾われ、願いを叶えるという木のお地蔵様とは…。
その不思議な力と江戸市井の人情を描く。
電子オリジナルの時代小説連作短編集。
第一話 拾われ地蔵第二話 つまみかんざし第三話 錦百合第四話 冬と春第五話 身代わり●松村比呂美(まつむら・ひろみ)1956年福岡県生まれ。
オール讀物推理小説新人賞最終候補作2作を含む『女たちの殺意』(新風舎)でデビュー。
著書に『キリコはお金持ちになりたいの』(幻冬舎文庫)、『鈍色の家』(光文社文庫)、『終わらせ人』『恨み忘れじ』(角川ホラー文庫)、『幸せのかたち』(双葉文庫)、『ふたつの名前』(SINGPOOSHA Enta!Mystery)などがある。
また、電子書籍オリジナル短編集に『ママさん探偵律子の事件簿』シリーズ、『果実の誤解』(アドレナライズ)などがある。




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