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屍船

奇妙なことに、彼らは年をとらなかった。
食事をしなくても空腹を覚えず、べつだん衰えもしなかった。
不死の身となった兵士たちは、退屈と焦燥のなか、一人また一人と狂っていった。
腹を切った者もいた。
だが、どんなにはらわたを引きずり出し、首を切り離されても、兵士は死ぬことができなかった。
船を見ぬこの島には、恩寵としての死は与えられていなかったのだ。
(「屍船」より) 混沌の海と恩寵の殺戮を描く表題作他、ホラー・怪奇短編16本を収録。
●倉阪鬼一郎(くらさか・きいちろう)1960年、三重県伊賀市生まれ。
早稲田大学第一文学部文芸専修卒。
同大学院文学研究科日本文学専攻博士課程前期中退。
在学中に幻想文学会に参加、1987年に短篇集『地底の鰐、天上の蛇』でデビュー。
印刷会社、校閲プロダクション勤務を経て、1998年より専業作家。
第3回世界バカミス☆アワード(2010年)、第4回攝津幸彦記念賞優秀賞(2018年)。
ホラー、ミステリー、幻想小説、近年は時代小説を多数発表、オリジナル著書数は170冊を超える。




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