四重奏 Quartet
悲鳴は幻聴ではなかった。
すでに瞳孔が開いていた。
両手の指は強ばっている。
蘇生の試みは空しかった。
息絶えたものが二度と動くことはなかった。
天使が見下ろしている。
人間の営みに天使たちが関わることはない。
それぞれの表情を浮かべたまま、ただ冷たく眺めているばかりだった。
(本文より)〈堕天使の部屋〉と名付けられた部屋、薔薇が咲き乱れる広い庭、そして獣のうなり声が聞こえる屋根裏部屋。
館を支配する旋律が戦慄に変わる時、大量殺戮劇が始まる……。
技巧の限りを尽くした驚愕のミステリ。
●倉阪鬼一郎(くらさか・きいちろう)1960年、三重県伊賀市生まれ。
早稲田大学第一文学部文芸専修卒。
同大学院文学研究科日本文学専攻博士課程前期中退。
在学中に幻想文学会に参加、1987年に短篇集『地底の鰐、天上の蛇』でデビュー。
印刷会社、校閲プロダクション勤務を経て、1998年より専業作家。
第3回世界バカミス☆アワード(2010年)、第4回攝津幸彦記念賞優秀賞(2018年)。
ホラー、ミステリー、幻想小説、近年は時代小説を多数発表、オリジナル著書数は170冊を超える。
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