冥い天使のための音楽
再び指揮者がヴァイオリンを弾きはじめる。
照明はさらに暗く、遠近法が微妙に狂いだす。
後ろに控えるコンサート・ミストレスの姿が紙のように薄くなる。
音楽は技巧的なカデンツァになる。
長い髪が揺れ、弾き振りをする指揮者の顔に纏わりつく。
だが、その顔はまだ朧げにしか見えない……。
尖塔をいただく館、庭に埋められた屍体、十三楽章。
長篇本格ゴシック・ミステリー。
●倉阪鬼一郎(くらさか・きいちろう)1960年、三重県伊賀市生まれ。
早稲田大学第一文学部文芸専修卒。
同大学院文学研究科日本文学専攻博士課程前期中退。
在学中に幻想文学会に参加、1987年に短篇集『地底の鰐、天上の蛇』でデビュー。
印刷会社、校閲プロダクション勤務を経て、1998年より専業作家。
第3回世界バカミス☆アワード(2010年)、第4回攝津幸彦記念賞優秀賞(2018年)。
ホラー、ミステリー、幻想小説、近年は時代小説を多数発表、オリジナル著書数は170冊を超える。
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