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怪奇十三夜

目ざめたとき、最初に映ったのは灰色の天井だった。
いやに高い天井に、くろぐろと蝶のようなしみがあった。
下半身は青い薄衣で覆われている。
両手は紐で固定されている。
病院には見えないが、どうやら手術台の上らしい。
「気がつかれましたね」穏やかな声が響いた。
目つきのあいまいな、背の高い老人が立っている。
額に何かを剥がしたような痣がある。
(「鬼祭」より) 怪奇小説家・倉阪鬼一郎が初期に発表した幻想文学・怪奇短篇集。
*鬼祭*絶句*階段*人文字*幻小路*地球儀*怪奇十三夜*夢でない夢*人肉遁走曲*禿頭回旋曲*七人の怪奇者*異界への就職*猟奇者ふたたび●倉阪鬼一郎(くらさか・きいちろう)1960年、三重県伊賀市生まれ。
早稲田大学第一文学部文芸専修卒。
同大学院文学研究科日本文学専攻博士課程前期中退。
在学中に幻想文学会に参加、1987年に短篇集『地底の鰐、天上の蛇』でデビュー。
印刷会社、校閲プロダクション勤務を経て、1998年より専業作家。
第3回世界バカミス☆アワード(2010年)、第4回攝津幸彦記念賞優秀賞(2018年)。
ホラー、ミステリー、幻想小説、近年は時代小説を多数発表、オリジナル著書数は170冊を超える。




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