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黄昏のバイヨン

言葉をなくして、ただ、みことを見上げていた珠紀の額に、静かに柔らかい髪のかかった自分の額を押し当てた後、みことは細い顎を引くようにしてゆっくりと顔を離した。
戸惑いに揺れて彼を追った珠紀の眼差しを、みことは黄昏の色が映った瞳で受け止めた。
(「黄昏のバイヨン」より) 中篇2本を収録した本格耽美小説作品集。
*黄昏のバイヨン*鏡戀●榊原史保美(さかきばら・しほみ)東京都出身。
立教女学院を経て中央大学文学部哲学科卒。
1982年『小説JUNE』創刊号の最優秀投稿作に選ばれ、「螢ケ池」でデビュー。
1985年、初の単行本、『龍神沼綺譚』を上梓。
以降、民俗学、宗教学の素養を生かし、形而上学的テーマを昇華させた作品『鬼神の血脈』『荊の冠』等、多数発表。
美意識に貫かれた作風により、「耽美小説の草分け的存在」と称されることも多い。
1995年発表の『蛇神 ジュナ』より、ペンネームを「榊原姿保美」から現在のものに改めている。
趣味は、陶芸、写真、近代建築・ギャラリー巡り。




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