火群の森
鼈甲を思わせる深い鳶色の膚と炎燃え立つ赤い髪……斑鳩の里’ぬばたまの館’の若き主であり、次期天皇と噂される父を持つ蜂子は、その異貌のためにひっそりと時を過ごしていた。
かたや、桜の薄桃の花びらの如く優しく儚い容貌を持つ厩戸皇子は、救世観音の化身として、飛鳥の京で華やかな世界の中心にあった。
蘇我馬子と物部守屋の政略の渦の中で、二人の皇子はたがいに激しい憧憬を抱く。
光と闇、生と死の交錯の果て、日出る国を現前させる魂たちの荘厳な営み。
歴史長編ロマン。
●榊原史保美(さかきばら・しほみ)東京都出身。
立教女学院を経て中央大学文学部哲学科卒。
1982年『小説JUNE』創刊号の最優秀投稿作に選ばれ、「螢ケ池」でデビュー。
1985年、初の単行本、『龍神沼綺譚』を上梓。
以降、民俗学、宗教学の素養を生かし、形而上学的テーマを昇華させた作品『鬼神の血脈』『荊の冠』等、多数発表。
美意識に貫かれた作風により、「耽美小説の草分け的存在」と称されることも多い。
1995年発表の『蛇神 ジュナ』より、ペンネームを「榊原姿保美」から現在のものに改めている。
趣味は、陶芸、写真、近代建築・ギャラリー巡り。
更新中です。しばらくお待ちください。