魔王
私は過去に出現したすべての偉大な聖者の根源である、と彼は言った。
私は時を待っていた。
そしてようやく機が熟した。
私はみずからの本体を顕して人類を救済する。
こうして世界大治療教は創立された。
遂に教祖は世に出たのだ。
(本文より)「宗教」という怪物を、食べてみせよう。
犬になった女と20人の父親から生まれ、みずから「世界大治療教」の教祖となって、宇宙支配の悪魔的野望に挑んだ男の、聖と汚辱の生涯とは。
長篇小説。
●村上政彦(むらかみ・まさひこ)作家。
1987年『純愛』で福武書店(現・ベネッセ)主催の「海燕」新人文学賞を受賞。
以後『ドライヴしない?』『ナイスボール』『青空』『量子のベルカント』『分界線』で5回の芥川賞候補に。
また『ナイスボール』は相米慎二監督により『あ、春』として映画化、ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞。
アジアの物語作家を自任している。
近著に『台湾聖母』(コールサック社)。
日本文藝家協会常務理事。
日本ペンクラブ会員。
文化庁国語分科会委員。
「脱原発社会をめざす文学者の会」事務局長。
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