辛口のカクテルを
ぼくが言ったことのほとんどは、酒の肴に小説や詩を読むという文学少女、亜矢子の受け売りだ。
「ふうん」彼女は頷き、それから言った。
「意味のあることは、もう書き尽くされてしまったんでしょうね。
今の作家はたいへんだわ」そうか。
なんてこった。
これが答えかもしれない。
答えは風に舞っていると言ったのは誰だ。
もしそうならば彼女は風だ。
(「水曜日の詩人たち」より) 著者の原点ともいうべき青春ハードボイルド短篇小説集。
*見えない標的*辛口のカクテルを*水曜日の詩人たち*詩人たちの喧噪*乾杯を小さな声で*月時計の夜●斎藤純(さいとう・じゅん)小説家。
1957年、盛岡市生まれ。
FM岩手在職中の1988年『テニス、そして殺人者のタンゴ』でデビュー。
1994年『ル・ジタン』で第47回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。
2005年『銀輪の覇者』(早川ミステリ文庫)が「このミステリーがすごい!」のベスト5に選出される。
岩手町立石神の丘美術館芸術監督、岩手県立図書館運営協議委員などをつとめている。
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