水曜の朝、午前3時
玉置が飲んでいた酒だ。
彼はここで誰を相手にこの酒を飲んだのだろうか。
玉置に対して抱いていた疑念が、今はもう固まりつつあった。
ぼくが持っている写真を見せてしまえば、一挙に解決するだろう。
玉置はこの女性と一緒だったのでしょう。
そう訊けば済むことだ。
それをバーテンダーに尋ねるのはまだ早い。
ぼくは迷っていたし、心の備えも充分ではなかった。
(「恋に墜ちたら」より) 恋愛小説、音楽カルチャーをテーマにした小説など、多彩な筆致で綴られた短篇小説集。
電子オリジナル作品。
*ブルースカイ*恋に墜ちたら*水曜の朝、午前3時*テイク・イット・イージー*コンパス*センチメンタル・バーボン●斎藤純(さいとう・じゅん)小説家。
1957年、盛岡市生まれ。
FM岩手在職中の1988年『テニス、そして殺人者のタンゴ』でデビュー。
1994年『ル・ジタン』で第47回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。
2005年『銀輪の覇者』(早川ミステリ文庫)が「このミステリーがすごい!」のベスト5に選出される。
岩手町立石神の丘美術館芸術監督、岩手県立図書館運営協議委員などをつとめている。
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