イーストリバーを渡った女
店の名はライオンといい、表通りに面した雑居ビルを裏にまわりこんだ一階奥にある。
陽があたらず、人通りもない。
ジャズ喫茶以外には借り手のない場所だ。
ライオンという店名の由来は、百獣の王のそれではなく、ブルーノート・レーベルの創始者だったアルフレッド・ライオンからきている。
二十年も前から営業しているこの店のオーナーが先年亡くなったとき、私は勤めを辞め、この店の権利を買った。
(「ベース・オン・ザ・ヒル」より) ジャズ通が集う老舗店「ライオン」で心を交わす人々、人間模様を描いた短篇小説集。
電子オリジナル作品。
*ベース・オン・ザ・ヒル*甘いサキソフォン*イーストリバーを渡った女*五つのコイン*カウンターの客*帰ってきた男●斎藤純(さいとう・じゅん)小説家。
1957年、盛岡市生まれ。
FM岩手在職中の1988年『テニス、そして殺人者のタンゴ』でデビュー。
1994年『ル・ジタン』で第47回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。
2005年『銀輪の覇者』(早川ミステリ文庫)が「このミステリーがすごい!」のベスト5に選出される。
岩手町立石神の丘美術館芸術監督、岩手県立図書館運営協議委員などをつとめている。
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