ブルースの聞こえる夜
その場から離れかけたとき、ドライバーの体がグラッと揺らいだ。
征司は素早く運転席側に駆けよった。
間に合わなかった。
ドライバーは肩からドサリと路面に落ちた。
同時に金属音が響いた。
征司はドライバーといっしょに転がり落ちたものを見て、立ちすくんだ。
拳銃だった。
スマートな形のオートマチックだ。
水銀灯を反射して、ブルーフィニッシュの鉄の肌がぬめっと輝いている。
(「ブルースの聞こえる夜」より) オートバイを軸に、ハードボイルドな作風の物語を集めた短篇小説集。
電子オリジナル作品。
*ブルースの聞こえる夜*甘い引金*ミッドナイト・ライダー*傷ついた魂*鏡と塩とオートバイと*あの日の海●斎藤純(さいとう・じゅん)小説家。
1957年、盛岡市生まれ。
FM岩手在職中の1988年『テニス、そして殺人者のタンゴ』でデビュー。
1994年『ル・ジタン』で第47回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。
2005年『銀輪の覇者』(早川ミステリ文庫)が「このミステリーがすごい!」のベスト5に選出される。
岩手町立石神の丘美術館芸術監督、岩手県立図書館運営協議委員などをつとめている。
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