天空の爪
伊作にとって、友衛を深く憎みながら、すべてを憎みきれないで、その相反する感情が胸奥でたえず葛藤を演じる日々が続いた。
傍目からは、異様とも奇怪とも映る生活であった。
というのは、伊作は、熊鷹の巣のある崖の下で、どうして父を殺したかと問い詰めて、友衛からなにも聞き出せなかったときより、くる日もくる日も友衛につきまといだしたからであった。
それも、友衛のうちに起き伏ししながらのことである。
(本文より) 太平洋戦争時の出羽山系の山々。
父を殺した理由を聞き出すため、そして復讐のために少年は山深くに住む鷹匠の元を訪れる。
だが彼の育てる鷹と触れあううち、少年の心が変化してゆく。
大自然の中で生きることの素晴らしさ、厳しさを描いた感動作。
●志茂田景樹(しもだ・かげき)静岡県生まれ。
おひつじ座のA型。
中央大学法学部卒。
塾講師、新聞記者などを経て、1976年秋に『やっとこ探偵』で第27回小説現代新人賞を、1980年には『黄色い牙』で第83回直木賞を受賞。
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