酩酊奇譚 腸の反乱
このときの私も、完全にそんな状態に陥っていた。
ただいつも以上の腹痛に襲われていたため、ほかに気持ちが行かず、抜け出せない悪夢のごとき感覚を楽しむ余裕がなかった。
そんな状態のときに、またしても声が聞こえてきた。
「いい加減にしろよ」今度は幻聴ではないとわかった。
どこから聞こえているのかまでもわかった。
私の体内からだった。
(「腸の反乱」より) 売れない作家・井之妖彦が体験した摩訶不思議な世界とは? 幻想、伝奇、ホラー、SF、酩酊……めくるめく倒錯と混沌。
すべて未発表作品で構成された電子オリジナルの短篇集。
*死人が踊る*私の気持ち*深夜の散歩*腸の反乱*特別展*抜魂*夜中の三鷹で*良い女*信号*まぼろし街●飯野文彦(いいの・ふみひこ)1961年、山梨県生まれ。
早稲田大学卒業。
1984年『新作ゴジラ』(講談社)のノベライズにてデビュー。
『オネアミスの翼』(朝日ソノラマ)、『アーク・ザ・ラッド』(エニックス)などノベライズ作品を数多く手がける。
『ゾンビ・アパート』(河出書房新社)、『怪奇無尽講』(双葉社)、『ハンマーヘッド』(TO文庫)など個性的なホラー作品でマニアックな評価が高い。
その他に『バッド・チューニング』『アルコォルノヰズ』『惑わしの森』『黒い本1・2』『影姫』などがある。
更新中です。しばらくお待ちください。