南朝の日輪 北畠親房
延元四年八月十六日、後醍醐天皇崩御。
「なんと帝が、おかくれになられたか。
ああ、お早すぎた」南朝方の中心人物・北畠親房は嘆き、大いに落胆した。
京都回復の望みはならず、草深い吉野の行宮に果てられた後醍醐天皇の不運と無念を思うと、はらはらと落涙するばかりである。
「この吉野を守りぬいて足利を討ち滅ぼすまでは、死ねぬ」南朝の京都回復のために影の軍団・多聞党を使い、足利家内部を攪乱する親房。
その心には若くして戦場に散った、わが子・顕家の面影が常によぎる……。
公卿でありながら、武将であり、軍師であり、冷徹な経営家でもあった親房の炎の生涯を描く。
長篇時代小説。
●志茂田景樹(しもだ・かげき)静岡県生まれ。
おひつじ座のA型。
中央大学法学部卒。
塾講師、新聞記者などを経て、1976年秋に『やっとこ探偵』で第27回小説現代新人賞を、1980年には『黄色い牙』で第83回直木賞を受賞。
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