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江戸の敵

ならず者の銀平は、山谷の茶屋女・お紋のヒモである。
美人局で江戸を荒し回った挙げ句、長崎行きを思い立った。
母親と自分を捨て、長崎で海産物問屋を営む父親を強請ろうというのだ。
一方、お紋にも当てがないわけではなかった。
馴染みだった役人が確か長崎に行っているはずだ……。
ニヒルな二人の腐れ縁を描く表題作など、十一編。
市井に生きる男女の愛欲を推理短編の手法で活写する時代小説短編集。
*餌屋の客人*忘れていた女*雨宿り*おびき出し*岡っ引無頼*寝ものがたり*生き返った男*身がわり*江戸の敵*三河屋*斬また斬●多岐川恭(たきがわ・きょう)1920年福岡県生まれ。
東大経済学部卒。
戦後、横浜正金銀行をへて毎日新聞西部本社に勤務。
1953年『みかん山』で作家デビュー。
『濡れた心』で第4回江戸川乱歩賞を、翌年には短編集『落ちる』で第40回直木賞を受賞。
以降、推理小説と共に時代小説も旺盛に執筆した。




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