卒都婆小町殺人事件
若き能楽師・梅津はテレビ画面を食い入るように見つめた。
「佐渡の伝統芸能」なる番組の中に、一瞬、律子の姿が映ったのだ。
彼女はかつて梅津の恋人であり、十九歳の時、塩屋という男の暴行をうけ妊娠し、思いあまって相手を刺殺して逃亡。
全国指名手配されたものの結局、行方不明になっていたのだ。
当時を知る友人・河辺からの電話でますます確信を強めた梅津は、十年前のあの忌わしい事件を終わらせるため、佐渡へと飛ぶ。
一方、河辺も二人の安否を気遣いながら、フェリーへと乗り込んだ……。
人間の心の奥底に潜む愛と憎しみを描く長篇サスペンス・ミステリ。
●斎藤澪(さいとう・みお)1944年、東京生まれ。
国学院大学文学部国文科卒業。
雑誌編集部、広告代理店勤務を経て作家活動に入る。
1981年『この子の七つのお祝いに』で第1回横溝正史賞を受賞して小説家デビュー。
『赤いランドセル』『冬かもめ心中』『花のもとにて』など著書多数。
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