兄の終い
一刻もはやく、兄を持ち運べるサイズにしてしまおう。
憎かった兄が死んだ。
残された元妻、息子、私(いもうと)――怒り、泣き、ちょっと笑った5日間。
「わたくし、宮城県警塩釜警察署刑事第一課の山下と申します。
実は、お兄様のご遺体が本日午後、多賀城市内にて発見されました」――寝るしたくをしていた「私」のところにかかってきた1本の電話。
それは、唯一の肉親であり、もう何年も会っていなかった兄の訃報だった。
第一発見者は、兄と二人きりで暮らしていた小学生の息子・良一君。
いまは児童相談所に保護されているという。
いつかこんな日が来る予感はあった。
金銭的にも精神的にも、迷惑ばかりかける人だった。
二度目の離婚をし、体を壊し、仕事を失い、困窮した兄は、底から這いがることなく、一人で死んだのだ。
急なことに呆然としている私に刑事は言った。
「ご遺体を引き取りに塩釜署にお越しいただきたいのです」 兄は確かに優しいところもある人だった。
わかり合えなくても、嫌いきることはできない。
どこにでもいる、そんな肉親の人生を終う意味を問う。
遺体を引き取り、火葬し、ゴミ屋敷と化している兄のアパートを整理し、引き払う。
そして、何より、良一君の今後のことがある。
兄の人生を終うため、私(いもうと)、元妻(加奈子ちゃん)、そして息子(良一君)の5日間の修羅場が幕を開ける。
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