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よくがんばりました。

だんじりが駆けめぐる祭りの夜。
決して交わることのなかった父と息子におとずれる奇跡。
著作累計100万部を突破した小説家・喜多川泰が紡ぐ心の再生物語。
[あらすじ]中学校の社会科教師として30年のキャリアをもつ石橋嘉人は、心が不安定な新米教師・山吹日奈の面倒をみながら、コロナ禍で大きく変化する教育現場や子どもたちの心情に憤りを感じていた。
ある日、愛媛県警からの連絡で実父が亡くなったことを知る。
父親とは38年前、逃げるように母親と家を飛び出してから会っていないうえに、自分の記憶からも消していた存在だった。
時はちょうど「西条まつり」が行われる秋の10月。
江戸時代から続く日本一のだんじり数を誇る祭りの高揚感が、唯一の父親との記憶を蘇らせた。
義人は、生まれて初めて父親の実像と向き合う決心をする。
それは、自分の心を癒す再生の時間でもあった。
[本文より]自分に与えられた条件のなかで、起こることすべてを受け入れて、誰にもその苦しみを理解してもらえないままに、ひとつの旅を終えた人に対して湧いてくる言葉は、嘉人のなかではひとつしかなかった。
「よくがんばりました」そしていつか自分も人生を終えるときに、誰かが、誰でもいい、たった一人でもいいから、自分に対してそう言ってくれたら、自分の人生は報われるんじゃないか。
そう思えた。
人間の凄さっていうのは、すべての人が、その人の人生を懸命に生きているところにある。




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