天保十五年。<br />記憶を失くした一人の男が、越後直江の津今町に流れ着いた。<br />偶然通りがかった橋で、やくざ集団「権藤家」から盲目の少女・さくらをかばった男は、その縁で町の旅籠屋に居候することになる。<br />季節は三月。<br />伝統行事『びしゃもん祭り』を控えて、人々は浮かれながらもどこか表情がこわばっていた。<br />聞くところによると、「権藤家」が祭りの襲撃を企てているらしい――。<br />過去を置いてきた剣士と、未来が見える盲目の少女。<br />儚くも美しい、ふたりの運命。<br />