風花――見えたのかさえあいまいで、それでも確かに自分を通り抜けた。<br />あの日確かに胸の中にあったもの。<br />誰と、何をしたのかもう思い出すこともない。<br />ただ暖かく、少し苦しい温度があるだけ。<br />そんな曖昧で不完全な自分。<br />あの日、あの時の想い出に色と匂いを与えてくれる。<br />「今日」と「あの日」を結ぶ、あたたかくも鼓膜を震わす35篇。<br />