敗戦直後、宗像滋子は子宮癌の手術を受け、女の機能を喪失する。<br />再発を恐れる彼女に、打算で結婚した夫と、学業も投げやりにして歌舞伎役者になろうとする娘との、神経を磨り減らす生活が重くのしかかる。<br />そんな日々の中、彼女は昔の恋人との交際に慰められ、小説を書くことに情熱を燃やすが……。<br />一人の女性の理性と情念の相剋。<br />『朱を奪うもの』『傷ある翼』に続く三部作の終局。<br />