無個性な生き方はできない。<br />しかし何かに成ることも嫌だ。<br />どうせなら、遊び人らしく野垂れ死をしたい――。<br />「暴飲暴食」「心臓破り」「傷は浅いが」……。<br />五十代に入ったことをきっかけに書き始めた連作は、還暦を迎えて急逝する、そのわずか三カ月前に脱稿した表題作をもって、中断した。<br />予感するように死を意識した日々の心情を綴った本書は、まさしく著者の「白鳥の歌」であった。<br />