耳の奥に刻まれた《音》の記憶をもとに半生を再構築する。<br />《音》は茫漠たる過去を鮮かに照らし出す。<br />――ヴェトナムの戦場で体験した迫撃砲の轟音。<br />家庭をかえりみない夫に対して妻と娘が浴びせかける罵声。<br />アマゾンで聞いたベートーヴェン……。<br />昭和29年にサントリーに入社し、芥川賞を得て作家となり現在に至るまでを、一人称「私」ぬきの文体で綴る野心作。<br />日本文学大賞受賞。<br />