敗戦のあとさき、惑乱と混濁と窮乏の時代状況下、最愛の妻リツ子が結核に倒れた。<br />あどけない息子を抱え、看護、食料調達、借銭、医者探しに奔走する夫。<br />救いを求める魂の叫びも病魔には届かず、リツ子はしだいに衰弱の度を深めてゆく……。<br />全てをむしりとられ、全てをなげうって懸命に生の再建を目指す夫婦の姿を通し、裸形の魂の美しくも凄絶な昇天を捉えた昭和文学の記念碑的長編。<br />