人が‘老いて生きる’とは何なのだろうか。<br />養女夫婦に家を追い出され、若い男に情愛を傾け死んでいった八十四歳の田之内せき。<br />菊水を飲み、八百年美童の姿を保ったという「菊慈童」を八十歳を過ぎた今、最後の力で演じようとしている能役者桜内遊仙。<br />七十半ばの女流作家香月滋乃の眼に映る様々な‘老い’の姿を通して、老年の内部に潜む妖しい妄執を描き、芸術と官能の深奥を探る。<br />