「予定日まで来たいうのは、お祝い事や」。<br />にぎやかな錦市場のアーケードを、慎二と園子は、お祝いの夕食にと、はもを探して歩いた。<br />五年前には、五ヶ月でお腹の赤ちゃんの心音が聞こえなくなったことがある。<br />今回は、十ヶ月をかけて隆起する火山のようにふくらんでいった園子の腹。<br />慎二と迎えたその瞬間、園子に大波が打ち寄せた――。<br />新たな「いのち」の誕生。<br />その奇蹟を描く物語。<br />