造り酒屋の箱入娘として育った茜は、十七歳の頃、文楽の三味線弾き、露沢清太郎が弾く一の糸の響に心を奪われた。<br />その感動は恋情へと昂っていくが、彼には所帯があった。<br />二十年が過ぎた。<br />清太郎は徳兵衛を襲名し、妻を亡くしていた。<br />独身を通した茜は、偶然再会した男の求婚を受入れ、後添えとなるのだった。<br />大正から戦後にかけて、芸道一筋に生きる男と愛に生きる女を描く波瀾万丈の一代記。<br />