厄年の小説家・羽山圭一郎はこわい夢をよくみる。<br />のっぺらぼうの女、眉の女、声の女、額の女、唇の女たちの様々な反応を想起する。<br />現実世界では友人の女性秘書秋岡カオルと逢瀬をかさねるが、やがて別れてパリへ旅立つ。<br />現実と回想と夢が微妙なリアリティーを醸し出す雰囲気の中に、中年男性の心理の襞を浮彫りにする。<br />散らかしながら纏めていく技巧冴えわたる長編小説。<br />