著者は知人の家で池の中にかきつばたの狂い咲きを見た。<br />が、見たものはそれだけではなかった。<br />水面には女の死体が浮いていたのだ―終戦時の混乱を描いて鬼気迫る「かきつばた」。<br />早稲田の貧乏学生の著者は田舎の兄に送るつもりだった無心状を、あろうことかレポートと取り違えて敬愛する師・吉田絃二郎に提出してしまった―ほのぼのと心なごむ青春回想記「無心状」。<br />名品全15編。<br />