昭和二十五年七月二日未明、鹿苑寺金閣は焼亡した。<br />放火犯人、同寺徒弟・林養賢、二十一歳。<br />はたして狂気のなせる業か、絢爛の美に殉じたのか? 生来の吃音、母親との確執、父親ゆずりの結核、そして拝金主義に徹する金閣への絶望……。<br />六年の後、身も心もぼろぼろになって死んでいった若い僧の生を見つめ、足と心で探りあてた痛切な魂の叫びを克明に刻む長編小説。<br />