小兵衛は今も時折、二十六年前、門弟滝の仇討ちに立会った際の、相手方の助太刀山崎との死闘を思い出す。<br />「生きていれば名ある剣客になっていたろうに」。<br />そんなある日、蕎麦屋で見かけた崩れた風体の浪人は、敵討ちを成就し名をあげたはずの滝だった。<br />そしてその直後、奇しくも小兵衛は、清廉に生きる山崎の遺児に出遇う。<br />老境の小兵衛が人生の浮沈に深く思いを馳せる、シリーズ最終巻。<br />