女優を目指して上京した少女は、運命の悪戯に全ての夢を打ち砕かれ、孤独のうちに歳月を過ごしてきた。<br />だがその男との出会いを境に、心の底に凍てついた狂気がゆっくりと溶けはじめる。<br />……なぜ忘れていたのだろう。<br />あの夏から、私は妊娠しているのだ。<br />そう、何年も、何年も、この子は待っていてくれたのよ……。<br />濃密な心理描写が絶賛された直木賞作家のデビュー作。<br />