ドイツの神経研究所で学ぶひとりの日本人精神科医。<br />彼が遠い異国へやって来たのは、人妻との情事に終止符を打つためでもあった。<br />ドナウ源流地帯、チロルの山々、北国の町々――ヨーロッパを彷徨う彼の胸に去来する不倫の恋への甘美な追憶、そして、作家としての目覚めと将来への怯え。<br />著者自身の若き日の魂の遍歴をふり返り、虚構のうちに再構成した《心の自伝》。<br />『幽霊』の続編。<br />