戦争末期の東京――空襲に怯え、明日をもしれぬ不安な日々を過ごす十九歳の里子。<br />母と伯母と杉並の家に暮らす彼女の前に、妻子を疎開させた隣人・市毛が現れる。<br />切迫する時代の空の下、身の回りの世話をするうち、里子と市毛はやがて密やかに結ばれるが……。<br />戦時を生きる市井の人々の日常と一人の女性の成長を、端正な筆致で描き上げた長編文学作品。<br />谷崎潤一郎賞受賞作。<br />