藩主の命によりローマ法王への親書を携えて、「侍」は海を渡った。<br />野心的な宣教師ベラスコを案内人に、メキシコ、スペインと苦難の旅は続き、ローマでは、お役目達成のために受洗を迫られる。<br />七年に及ぶ旅の果て、キリシタン禁制、鎖国となった故国へもどった「侍」を待っていたものは――。<br />政治の渦に巻きこまれ、歴史の闇に消えていった男の‘生’を通して、人生と信仰の意味を問う。<br />