差出人にも、故人の名前にも、まったく心当たりのない香典返しの小包が自分宛てに届いた。<br />むろん通夜も葬儀も行っていない。<br />いったい何故、何のために。<br />記憶を整えると、遠い昔に別れた女の名前が蘇り……。<br />老いの入り口に立った男の憂いと怒り、焦燥、絶望、狂気、そしてエロス。<br />芥川賞作家が円熟の筆で描く珠玉の短篇小説集。<br />