ついに工事が始まった。<br />大石を沈めては堰を作り、水路を切りひらいてゆく。<br />百姓たちは汗水を拭う暇もなく働いた。<br />「水が来たぞ」。<br />苦難の果てに叫び声は上がった。<br />子々孫々にまで筑後川の恵みがもたらされた瞬間だ。<br />そして、この大事業は、領民の幸せをひたすらに願った老武士の、命を懸けたある行為なくしては、決して成されなかった。<br />故郷の大地に捧げられた、熱涙溢れる歴史長篇。<br />