ある日突然、中国の画家・石濤の絵が一点舞い込んできた。<br />深夜、ウイスキーの水割を飲みながらその軸に対い合っていると、不思議にアレルギー地獄から解放される。<br />だが、どこからともなく聞こえてくる持ち主の嗄れた声。<br />以後、度々交わされる老人との挑発的な対話……忍び寄る死の予感と対峙するような表題作他、「生きる」など全五篇を収録。<br />作家の生涯の仕事を凝縮した最後の短篇集。<br />