ふと手にしたわくら葉の繊細な模様に呼び覚まされた、遠い日の父の肌の記憶を描く表題作ほか、温泉旅館で七十過ぎの老人と‘添い寝’することで暮らしを立てている女の意外な過去が語られる「そいね」、身体にいい‘牛乳’を嫁に内緒で向かいの家で取ってもらっているいせ婆さんの話「おぼしめし」など、わずか十数ページに人生の様々な味わいを封じ込めた17編。<br />連作短篇〈モザイク〉第3集。<br />