怒りに駆られ、私の胸ぐらをつかんだ父。<br />旅先の宿で、ふと姿を消した母。<br />混雑するプラットフォームで、私を探し続けた恋人――。<br />訪れた土地や手に取った書物の中に息づく過去の断片が、作家自身の記憶を揺さぶるとき、もう二度と会うことのない人への思いが湧き上がる。<br />自伝的要素の強い表題作ほか、全7篇を収める短篇集。<br />