口のきけない青年は、入り組んだ海岸線に沿って、ただバスを走らせ続けることしかできなかった。<br />まるで、世界を縫い合わせるかのように――。<br />芥川賞候補となった表題作と、自身が人魚であると信じる老婆の物語「人魚の唄」を収録。<br />寂れた漁村が特異な輝きを帯びる、神話的な二篇。<br />三島賞受賞作家、渾身の野心作。<br />