劇作家・牧野は俳優の市川扇十郎から旧作を再演したいという申し出をうける。<br />牧野にはとても30年前の舞台は再現できまいと思われてためらうのだが……。<br />人の心も町並みもすっかり変わり果てた中で、再演に情熱を傾ける人々。<br />そこになお残っている昔ながらの気遣いや市井の営みを描きつつ、滅びゆく東京の街への惜別の思いを謳ったものとして、著者の遺言ともいうべき現代小説。<br />