悟達の本因坊秀哉名人に、勝負の鬼大竹七段が挑む……本因坊の引退碁は名人の病気のため再三中断、半年にわたって行われた。<br />この対局を観戦した著者が、烏鷺の争いの緊迫した劇にうたれ、「一芸に執して、現実の多くを失った人の悲劇」を描く。<br />盤上の一手一手が、終局に向って収斂されてゆくように、ひたすら‘死’への傾斜を辿る痩躯の名人の姿を、冷徹な筆で綴る珠玉の名作。<br />