親しい友人も、愛した男たちもすべて、もうこの世にはいない。<br />ありありと感じる死者の気配を、日々、筆で書き留めるだけだ――。<br />病を乗りこえ、93歳でなお書かずにいられない衝動に突き動かされ、十年の歳月をかけて紡ぎ出された珠玉の小説集。<br />山姥のような老女との淡い交わり、自身の家族のこと、重信房子との面会の話など全9篇。<br />