火宅と化したわが家を救ってくれたのは、「彼女」の眼差しだった。<br />妻との間に生じ始めた亀裂、仕事で出会った女性との心ときめく逢瀬、やがて迎えた家庭の崩壊。<br />その中で二匹の犬との言葉を超えた交情が得難い安らぎをもたらす。<br />だが、別離の時が訪れて……初老を迎えた男の心の危機を繊細に、赤裸々に描き切った哀感極まる私小説。<br />