私はチェンナイ生活三か月半にして、百年に一度の洪水に遭遇した。<br />橋の下に逆巻く川の流れの泥から百年の記憶が蘇る! かつて綴られなかった手紙、眺められなかった風景、聴かれなかった歌。<br />話されなかったことば、濡れなかった雨、ふれられなかった唇が、百年泥だ。<br />流れゆくのは――あったかもしれない人生、群れみだれる人びと……。<br />