だれもが「かし」と呼ぶ隅田河口のまちに、ひとつの秘密を抱いた青年が住みついた。<br />そこに住む人にとって、「どこの誰か」よりも「どんな誰か」が大切なまち。<br />そんなまちの心優しい人々とともに彼は暮らし、〈秘密〉から解放される日の来るのを待っていた。<br />心ならずも魚河岸の町に身をひそめた青年と、まちの人々との人間模様を情感こまやかに描き出した長編小説。<br />直木賞受賞作。<br />